道の駅にUD 現況調査編


6 道の駅の実地調査結果
道の駅は2005年10月現在、北海道内に90箇所 (内1箇所は臨時閉鎖中) オープンしているが、9月中旬から11月中旬にかけての約2ヶ月間で全道89箇所の実地調査を行った。 駅への到着が早朝(9時半過ぎ)や夕方遅く(18時前後)になり、センター施設の内部を見られない駅も4箇所あったが、道の駅付近の交通状況、国道からの進入路、 駐車場、照明、トイレ、無料休憩所、 道路情報端末、物販施設及び隣接する各種施設を見ることができた。 ただし、実地調査の開始段階において5章で述べた課題がすべて念頭にあった訳でなく、調査を重ねる中で気付いた事項も多い。 そこで、本調査はあらかじめ用意した調査項目に従い、もれなく横断的に調査した結果の分析ではない。良くも悪しくも総合的な印象に頼るところが大きい。 また、実地調査による見聞に加え、北海道地区「道の駅連絡会」のホームページで公開する資料を使用した。 本章では実地調査した内容とネット上の資料とを基に、U.D.の7原則の指針から前章で展開した 切り口に従い、道の駅の現況について整理する。

6.1 サービスの対象者群
今回の現地調査で外観から分かるアクセシビリティの対応策に、段差解消スロープと障害者用トイレとがあった。点字ブロックの採用はほとんど見られなかった。 そこで、全体を通じた施設設計上のサービスの対象として、老人や車いす使用者など移動制約者までが視野にあると感じた。 ただし、道の駅で安全、安心なサービスを終日提供するとの目標に立つならば、6.5(3.1)で述べるように女性がサービスの対象者群に入るか議論の余地がありそうである。

6.2 マクロの配置計画
調査対象とした90箇所の道の駅と国道の位置関係を図1に示した。 道の駅の基本的サービスの内、車いす対応のトイレが一年中使える道の駅を赤色丸で、条件付き又は無い道の駅は黄色丸で分けて示した。 また、広域のサービス水準を比較するため、札幌市を起終点として道の駅間の所要時間(注記1)を整理した(図2)。 ここに、各地点間の所要時間は国道と主要道道の利用を前提とし、北の道ナビ2)の推計値を参考にした。 道の駅のサービス水準を時間距離で整理する理由は、利用者が道の駅での休憩を思い立ってから、サービスを受けられまでの時間が重要と考えたからである。 幾つかの区間は道の駅の区間距離を計る組み合わせが複数あるが、札幌市発で交通需要の多いと思われるルートの距離を優先して表示した (例えば、上川町付近は「とうま- しらたき」間と「とうま-おんねゆ温泉」間に共通する区間であるが、39号が幹線と考え後者の時間距離の赤色細線を採用した)。 また、走行ルートから往復2km以上脇道に離れる駅は、通過交通に対して無効として評価した(例えば、「ライスランドふかがわ-びふか」間の「あさひかわ」)。 また、トイレが障害者用を含め一年中、終日利用できない駅(黄色丸の6箇所)も無効として評価した。


(1) 道の駅の分布密度の総体管理
図2より道の駅間の時間距離が「~2時間」以上となる黄色線と赤色細線の区間が全道各地に見られ、幹線道路もその例外でないことが分かる。 そこで、一桁国道と二桁国道の「~2時間」よりサービスの希薄な区間を拾い出したのが表1である。 同表の区間表示に「*」を付した区間には路線から少し離れた脇道に道の駅があるが、往復2km以上の寄り道になるので、無いものとして評価した区間であることを示す。

(2) 代替ルートのサービス水準の維持
表1の区間に代替路線を想定し、(1)と同じ基準で整理したのが表2である。国道5号の代替路線は5号とほぼ並行する区間にサービスの希薄な区間を有しており、路線間の補完関係は小さい。 国道12号の代替路線もまたサービスの希薄な区間を持つが、弱点となる区間が両路線で異なっており、厳しい休憩管理の必要な場合には、両路線を途中で乗り換えるルートが選択可能である。 また、目的地までの走行距離や時間距離が幾分長くなることを受容するならば、他のルートは代替路線の方がむしろ良好なサービス水準にある。
本件目標課題の観点から、主要幹線と補助幹線の間でサービス水準に重大な差はなく、両者の間で弱点の補完関係が成立する路線も認められる。


(3) 利用度の高い路線の重視
表1で「*」を付した区間について、道の駅が幹線沿いにあると仮定するときの時間距離を試算した。 深川-美深間の2時間52分は約45分と2時間10分とに、札幌-伊達間の3時間43分は約1時間10分、2時間と30分に分割され、サービス水準は改善される。 また、長距離を走行中の運転者は寄り道を厭うと考え、国道から道の駅の駐車場への進入路について、駐車場に直接入れるか、道道や市町村道経由となるかについて整理した(表3)。 主要国道以外の国道に道の駅がある場合には「他国道」に整理した。国道から直接入れない道の駅は、駐車場が国道に面する駅に比べ使いにくい印象を持った。 以上より、道の駅のマクロの配置計画の重要性が伺われる。
本件目標課題の観点から、道の駅は利用度の高い場所に設置することが、サービス水準の維持に効果的と考える。 同一市町村内を複数の国道が通過する場合、より交通量の多い路線へのサービスを優先する観点から、設置場所の選定が重要である。


6.3 ミクロの配置計画
今回調査した時期は紅葉前線が本道を縦断する9月中旬から11月中旬までの週末で、どこの駅を訪れても人出が多かった。 この調査時点における各駅周辺の交通状況が通年の状況を代表するか不明であるが、道の駅の利用のために車の流れから離脱し、また復帰するのに大きな危険を感じる場所はなかった。 ただし、進入口が交差点近い箇所では、交差点を右左折する車輌と道の駅に入る車輌の動きが紛らわしく、運転に不安を感じる箇所もあった。 また、交通量が比較的多い場所には道の駅用の右折レーンが設置されるなど、安全な利用のための対策が処理済みの個所もあった。

6.4 利用者の誘導計画
(1) 認識しやすい案内標識
道の駅の標識は国道の標準的な案内標識と思われ、道の駅と寸法や色づかいの似た標識が多数あった。しかし、道の駅の標識はシンボルマークが白地の左隅を正方形に青く染めている(写真1)。 他に同様のパターンが少ないことから、文字を判読できる位置より以遠からそれと識別できた。 すべての駅で標識を統一していることと、数10kmごとに同じパターンの標識が繰り返し現れることから、長距離を運転する人々はその色や形から学習効果が期待できるものと思われる。 また、標識の掲示方法は大部分の地域で道路上に張り出す片持式であるのに対し、道東を中心とする一部の駅は道路脇の地上2m程の高さに設置する路側式であった。 片持式は路側式に比べ高い位置にある上に路上に張り出すこと、及び視界を遮るものが少ないことから、遠くからでも視認し易かった。
本件目標課題の観点から、現在供用されている標識は認識し易く、所期の目的を達しているものと考える。


(2) 判りやすい駅の名前
道の駅の登録名称を命名の由来に従い分類したのが表4である。市町村名をほぼそのまま駅名にしたところが26箇所(29%)で、内22箇所(24%)がひらがなの表記である。 市町村名に何らかの形容句を加え、地域の特徴やアピールなどを付した駅が48箇所(53%)である。また、市町村内の地域名を用いる駅が12箇所(13%)である。 市町村名だけの駅は短く、読み易いので土地勘のない人にも呼び易く、覚え易いように思われる。 他方、特徴などを加えた駅名は、長かったり、理解できない表現を含んでいたりで、呼び難く、覚え難い駅もある。 地域名を採用した道の駅は道内居住者でも名前から所在地が思い浮かばない箇所もありそうだ。
本件目標課題の観点から、道の駅の名前は走行中の車中から容易に読めそうな駅もあるが、難しそうな駅も相当数あり、誰もが判り易くする工夫が望まれる。


(3) 確実に誘導する設置方法
道の駅に接近してからの誘導は、全道でほぼ統一的なタイミング(手前2km、1kmと進入地点)で行われている。 誘導案内を提供する2kmを時間距離に換算すると、通常の運行速度で3分前後となる。道の駅を探している運転者であれば、数分間に3回繰り返される案内にいずれかの時点で気付くと思われる。 また、案内標識が目的の駅までの残距離を逐次告知することは、運転者に安心感を 与えると同時に、移動する車の流れからの離脱準備に有用と思われる。 ただし、道の駅が道路の左右どちら側にあるかの告知は、道の駅への分岐箇所で駐車場入口の位置情報として示す駅が多かった。 そこで、どちらへ曲がるとの方向指示を出すことなく、減速を始めざるを得ない駅も少数ながらあった。 なお、駅の手前5kmの地点から告知を始める駅、また中途半端な距離での告知する駅や予告なしで突然表示のある駅も少数ながら認められた。
本件目標課題の観点から、道の駅への誘導方法は全道でおおむね統一的に行われており、所期の目的を効果的に果たしていると思われる。 ただし、道の駅のある側の告知を直近に迫る以前に知らせることが、車輌の流れからの円滑な離脱に有用と考える。

6.5 サービスの提供方法
(1)共用化の環境整備
(1.1) 標高差への適切な対応
センター施設やトイレ等の建築諸元は人為的に決められ、設計者の考え方次第で駐車場の地盤高(以下G.L.と記す)から施設の床面高(以下F.L.と記す)までの標高差を大きくも、小さくもできる。 各駅のセンター施設及びトイレのF.L.が駐車場のG.L.と、どのような高さ関係にあるか施設数を整理したのが表5である。 ここに、利用施設F.L.が駐車場G.L.と同じ高さの施設をGL、歩道高 (+20cm)程度の施設を歩道高、建築基準法の防湿対策(+45cm)によると思われる施設を高床、 それ以上高い施設を高所として計上した。U.D.の観点からはセンター施設やトイレのF.L.は駐車場G.L.と同じ標高が良く、最大でもその差を20cm(歩道高)程度以下に留めることが望ましい。 現状で上の条件を満たす駅は、センター施設とトイレでそれぞれ42と50箇所と半数前後にとどまる。 しかし、それ以上標高差のある施設について、施設や周辺状況からF.L.を歩道高以上に高くする合理的理由が想像できた駅は少なかった。
F.L.が歩道高程度を含め駐車場G.L.と標高差のある施設では、例外を除き両者を繋ぐスロープが設けられている。 スロープの勾配は計測しなかったが、多くが容易に昇降できたことから5%前後の 勾配と思われる。 しかし、スロープの勾配が5%を大幅に越え、車いすでの昇降に危険を感じる箇所、自力での移動が困難な箇所や積雪時には健常者も歩行に危険を伴うと思われる箇所もあった。 また、段差があるのにスロープの見あたらない施設、スロープがあっても主動線から離れた場所だけにある施設なども見られた。 更に、歩道と駐車場を繋ぐスロープの縁石が車輌乗り入れ部用である例や扉の前に踊り場のないスロープなどもあり、細部設計で既知の技術の徹底が重要と思われる。
本件目標課題の観点から、構内にある施設間の標高差の設定に理解を超える事例が少なからずあった。 また、そのすり付けは大部分が利用し易い条件にあるが、中には既知の知見が生かされない箇所も認められた。
(1.2) 人と車輌の動線管理
大多数の道の駅は車輌の駐車場所を白線で区画し、人や車輌が移動するための通路部分と分離している。 しかし、白線だけで物理的な区画物がないせいか、人も車輌も駐車場内の空いている場所を 気ままに移動、駐車する姿が目を引いた。 その結果、人や車輌の不規則な交錯や通路部分へのはみ出しなども見られた。それは使い方に自由度が高い一方、使用方法の秩序が乱れがちであった。 また、維持管理上は除雪効率の良い構造である一方、景観上はだだっ広いだけの殺風景な空間となっている。 更に、サンデードライバーなど運転に不慣れな人々の利用を考えると、車輌の並列駐車や退出に手こずりそうな狭い区画割りもあった。
本件目標課題の観点から、駐車場には人と車輌とが交錯する状況が随所で認められ、両者の動線を適切に管理することが必要と思われる。 (1.3) 誰もが使える平面的、立体的環境
利用空間の平面的な取り合いは物産館内の通路を含め、車いすで通行する幅員が概ね確保されていた。 しかし、利用者の混雑する駅では車いすによる物産館内への進入に躊躇を覚える箇所も認められた。 また、情報端末は多くが無料休憩室又はロビーに設置されており、それらは利用者が操作卓の前に立っても他の人々の活動に支障のない広さが確保されていた。 ただし、2割程度の駅では端末前の操作空間が物産館内の通路と共有されており、情報端末の使用時に他者の通行への支障が気遣われた。 また、展示物の高さや奥行きについては、誰もが手や視線の届く範囲への配慮が不十分と思われる事例も認められた。
本件目標課題の観点から、通路幅などの基本的な環境は必要条件を満たす駅が多い一方、混雑時や情報端末の利用が増える場合には、使用条件の見直しが必要と思われる箇所が認められた。


(2)サービス水準維持の管理運営
(2.1) 衛生や積雪の日常的管理
道の駅のトイレはすべて水洗式で、清潔感の高いところが大部分である。ただ、一部の駅で臭気が強いところや床が汚れているところがあるなど、道の駅間でサービス水準に格差が認められた。 雪への対応に関しては降雪が始まる以前の調査であったため、未確認である。 各駅とも適宜除雪を行うものと思われるが、その頻度には限界があるため、積雪状況に応じた移動障壁の発生が避けられないものと思われる。
本件目標課題の観点から、個々の駅において日常の管理が重要と考える。 冬期に積雪の影響を受けない施設に造るのに経済的な負担がかさむことから、積雪の影響を受けにくい構造への工夫が望まれる。 (2.2) 故障発生時の対応策
今回の調査ではトイレに故障中の箇所はなく、故障時の対応について調査する機会に恵まれなかった。 情報端末は大部分の駅で目に付きやすい場所に設置される一方、所在が確認できなかった駅が7箇所、電源未投入の駅が2箇所、調整中の駅が1箇所及び故障中の駅が2箇所あった。 使えない状況にある端末がサービスの復旧・再開までにどの程度の期間を要し、その間どのような対応を行っている のかは確認しなかった。
今回の調査からは、本件目標課題にかかる具体の問題意識は明らかにならなかった。

(3)快適に使える施設環境
(3.1) 安心して24時間利用できるトイレ
日没後に着いたある道の駅は駐車場一帯が闇に包まれ、構内にある自動販売機前と売店付近が微かに明るいのみであった。 その後の調査で道の駅の駐車場は一般的な街路灯による照明が多く、道路照明やサーチライトなど高照度の照明を設備する駅はわずかであった。 各道の駅構内の照度が夜間どれ程かは未調査で断定できないが、上述の駅が例外的に暗いとは思えなかった。 夜間に女性が一人で使おうと思えるトイレ数を調べたなら、厳しい数字となるように感じる。多くの道の駅は通年で終日、安全、安心に使える環境に保つことが容易ならざる目標に思える。 なぜなら、道の駅は街外れや郊外、また広大な駐車場の片隅にあることが多く、季節や時間帯によっては他人の目が届きにくい場所となるからである。
本件目標課題の観点から、トイレの物理的環境はほとんどの駅で整っているが、使用環境については日没後におけるトイレ及びその周辺の照度や死角の状況の調査が必要と思われる。 それには 女性や老人を立ち合いによる実地調査が必要と考える。
(3.2) 誰もが立ち寄りたくなる誘因
道の駅は「地域の連携」ニーズが盛り込まれており、多くの駅で食事の提供(83箇所、92%)や地域の特産品等の販売(88箇所、92%)などが行われていた。 調査時点が秋の収穫期に重なりイベントが多かったこともあり、立ち寄りの誘因となっていた。
本件目標課題の観点から、レストランや物産館が立ち寄りの動機付けとして機能する道の駅が多くあった。 また、スタンプラリーの冊子を持参する利用者が多数、随所で見られ、それが休憩の誘因として機能していることが確認できた。
(3.3) 各自のペースで使える駐車場
すべての道の駅に障害者用駐車スペースがあるものと思い込んで調査を始めたが、ない駅があることに調査の中盤で気付いた。 そのため、全体数を把握していないが、専用スペースのない駅を複数確認した。専用駐車スペースを設ける駅では、多くがセンター施設やトイレの近くに配置され、概ね十分な広さを有している。 しかし、利用者の多い駅ではその多くが先客に使われ、想定外の人々による使用が多かった。
本件目標課題の観点からは、利用動線から適切な位置に、適切な広さの駐車空間を設ける駅がほとんどであった。 ただし、サービスの提供を想定した人々が確実に使えるソフト面を含めた工夫が必要と思われる。
(3.4) いつでも使える休憩施設
無料休憩施設のある駅は90駅中47箇所(52%)にとどまる。 それらが整備される区画も多くが夜間閉鎖される区域内にあり、夕刻から朝まで雨や雪、また極寒の日でも車から降りて体を伸ばせる屋内の休憩場所のない駅がほとんどである。 夏の観光盛期におけるセンター施設の開館時刻と閉館時刻を北海道地区「道の駅連絡会」のホームページで調べた結果を表6に示す。 最も度数の多いのは 開館時刻が9時の62軒(56%)、閉館時刻が18時で35軒(32%)である。 単純平均すると朝9時から夕方18時半まで9時間半のサービスであり、観光時期以外は9時から18時までの9時間である。 毎週一回程度 休日をとる駅もあり、実際のサービス時間は年間時間の三分の一程度の現状である。
本件目標課題の観点から、休憩施設のある駅は半数強であるが、センター施設の開く日中だけのサービスである。 その重要性が高まる日没後におけるサービスのあり方について広範な検討が望まれる。


(4)説明要らずの使用法
(4.1) 何処でも同じ基本サービス
北海道地区「道の駅連絡会」が運営するホームページから、各種利用施設がいくつの道の駅に整備されているかを整理したのが表7である。 著者が道の駅のすべてで無条件に使えることが望ましいと考える施設(図中黄色)と、その他(図中黄緑色)に大別した。 前者は基本的サービス、後者は付加的サービスと呼ぶ。基本的サービスの内駐車場、一般用トイレと電話は既にすべての駅で整備済みである。 他方、身障者用トイレは終日使えない駅が6箇所(7%)、売店のない駅が3箇所(3%)、情報端末のない駅が7箇所(8%)、無料休憩所のない駅が43箇所(48%)あった。
本件目標課題の観点から、基本的サービスはほとんどの駅で使える一方、幾つかのサービスに取りこぼしがあった。 道の駅の運営者が相互に協力して総体として提供する基本サービスのメニューを定め、いつでも何処でも利用できるサービスにするならば、 道の駅の信頼度と利便性は格段に向上すると思われる。
(4.2) 誰もが使いやすい情報提供
今回の調査時点で使用可能な状態にあった情報端末は77箇所(86%)であった。調査時点で各駅とも多くの来訪者がいたが、端末を操作する人は限られた駅のみであった。 また、情報端末の大半は夜間 閉鎖される部屋に置かれており、情報の入手はセンター施設のサービス時間内に限られていた。
本件目標課題の観点から、情報提供はすべての駅でいつでも誰もが入手できるシステムの構築と、より多くの人々が操作しようと思える情報内容と表示内容とに向けた検証が必要と思われる。


7 道の駅への展開
7.1 サービスの対象者群
本章ではU.D.の観点からサービスの提供方法の具体展開について、5.3.1で列挙した人々を対象として設計への反映方策を検討する。 ここでは新たな視点のある項目だけについて触れるので、構成を前章に合わせる関係で一部は項目名に(略)とだけ表記とした。

7.2 マクロの配置計画
(1) 道の駅の分布密度の総体管理
道内の全市町村のすべてに1箇所ずつ道の駅を設けると仮定しても、その間隔が大きく開く区間が残る。 他方、道路管理者はチェーン交換場所、除雪ステーションや駐車帯の一部に駐車場とトイレを設置した箇所が多数ある。 そこで、高速道路でサービス水準の異なるサービスエリアとパーキングエリアを使い分けるように、一般道でも道の駅とそれを補完する施設の両用が考えられる。 道の駅だけでは賄えない休憩場所の補助点として、それに準ずる施設を指定してはどうだろう。 仮にそれらを拡大道の駅と名付け、道の駅と似たマークを用い、道の駅マップで紹介すると共に誘導を行うなら、休憩に対する現状のサービス水準は格段に上がる。 2005年4月現在で通年、終日使用できる障害者用トイレを備える駐車場34箇所(北海道「道の駅連絡会」調べより)を図1に 緑色丸で示した。 それらを加えた各路線のサービス水準を時間距離で整理したのが図3である。図2に比べ全道各所でサービス水準が向上している。 しかし、それでもなお赤色線や黄色線の区間が 相当距離残る(注記2)が、これらは道の駅の設置の緊急性が高い地域と読める。 道路管理者以外にも通年で、終日利用可能な駐車場とトイレを備える施設があるので、それらの施設を含めて拡大道の駅に指定すれば、 最小の投資でより高水準で均質なシステムが早期に構築できると考える。
(2)代替ルートのサービス水準の維持(略)
(3)利用度の高い路線の重視(略)


7.3 ミクロの配置計画
道の駅を設置する場所の選定に当たり、誰もが安全かつ容易に出入りできる場所を選ぶことが望まれる。そのための配慮事項として次の諸点が考えられる。
-交通条件~運行速度の速くない区間
      渋滞等の少ない区間
-道路条件~カーブや坂路等で見通しの悪くない区間
      信号や分岐などで交通流が乱れない区間
-周辺条件~紛らわしい類似施設のない区間
      遠方からでも進入路が確認しやすい区間
また、7.4(3)より、夜間の安全な利用の観点からミクロの配置計画への要求が生じ、次の要件が加わる。
-利用条件~他人の目の感じられる区域

7.4 利用者の誘導計画
(1) 認識し易い案内標識
既設の案内標識は6章で述べたように所期の目的を果たしている。 設置方法に一部地域で統一性を欠く点については、標識の掲示方式を片持式に統一し、既に路側式で設置の標識は付け替えることが望まれる。 また、3枚組の標識に少しずつ異なる役割を担わせてはどうであろう。 例えば、2km手前の案内標識は従来通りの事前告知とし、1km手前は道の駅が進行方向の 何れの側にあるかの告知を加え、 駐車場への進入地点で次の道の駅までの距離を表示するなら、利用者の判断がより合理的に行えるだろう。 なお、標識の設置場所が道の駅からちょうどの距離に得られず、残距離を端数まで表示する標識もあったが、そのような場合でもkmに丸めた距離表示が視認性に優れ 実用性を損なわない方法と考える。また、地域的な条件から5kmの 標識を付ける駅もあったが、近距離の誘導は標準通り3枚組とすることが混乱を防ぐ方法である。

(2) 判りやすい駅の名前
これまで使われている駅名は高速で移動する車中から読もうとすると、土地勘のない人々や外国人にとって判読の難しい名称が含まれる。 しかし、それらの駅名はそれぞれ地元の人々の 思い入れや愛着があったり、既に利用者に定着したりするものもある。現実的には名称を変更することが望ましいとばかりは言い難い。 そこで、外国人を含む誰もが容易に認識し易くする方策として、記号による標記の併用について考えた。アルファベットとアラビア数字とを組み合わせる記号は、 高速で走行中の車中からでも読み易いばかりでなく、移動中の自分の位置を認識させられる方法が考えられる。ここでは二つの方法について考えた。
-北海道を20kmメッシュに区切り、アルファベットとアラビア数字の組み合わせで駅を表現する方法
この方法では東西をA~Yまで25分割、南北を01~26まで26分割し、道の駅を座標で表現する。 例えば、北に向かえば数字が増え、東に移動すればアルファベットが進むなどで位置関係がつかめる。
-ルートを最遠の目的地まで単一のアルファベット表現で表わし、札幌から順に番号を付す方法
この方法では走行国道の番号が途中で変わっても、ルート名(アルファベットの組み合わせ)を変えない。 例えば、根室に向かうのに国道274号、38号、44号をたどるが、それをイーストロード(ER) と名付ければ、根室まで一貫してER**と呼べる。
試みにメッシュを切る方法とルート名を付す方法で札幌市から根室市までの通過町村に記号を付したのが表8である。国道は札幌市から豊頃町まで東進し、 その後東北東に進むが、メッシュ法の表記は豊頃町まで数字が10か11でほとんど変わらない一方、アルファベットだけがGからQまで進む。 その後、町が変わる毎にアルファベットが1つ程度進む一方、数字が2~3町村毎に増える。アルファベットと数字の変化は自動車の東進や北上の直感との対応がよい。 ただし、同一メッシュに二つの自治体が入ったり、空白のメッシュが生じたりするなどの不都合も認められる。 なお、表中でアルファベットを小文字で表記したのは拡大道の駅がある自治体、( )内は現在道の駅のない自治体を示す。 ルート法は移動に伴い国道名が変わっても、全体を通じてERと 単一の路線名で通せる単純さが得られる。札幌市へ向かう場合は、通番がカウントダウンとなる楽しみもある。 いずれの方法も記号の導入が単に駅名を認識し易くするだけでなく、目的地と 自らの走行地点との関係を直感させる利点がある。


(3)確実に誘導する設置方法
道の駅までの距離が2kmに接近して以降の近距離の誘導に関し、現在の手法が有効に機能していることは既述の通りである。 しかし、道の駅の設置間隔が数10km、場所によっては100km以上である現状を勘案すると、中距離からの誘導が長距離運転者にとって有用である。 仮に道の駅までの距離を10km間隔で表示するとすれば、北海道内のどこを走行中でも10数分の間隔で中距離の誘導と、位置確認が可能になる。 本道のように市街や集落の間隔が開いている地域では、特に土地勘のない人や横道から合流する運転者にとって位置確認情報として機能することが期待できる。

7.5 サービスの提供方法
(1)共用化の環境整備
(1.1) 標高差への適正な対応
利用の統合を目指す観点から、施設間の連続化はスロープなど特別の道具立てを必要としない環境が望ましく、駐車場G.L.と施設F.L.を同標高とすることが目標となる。 また、積雪時のアクセス路の使用条件を考えるとき、両者に標高差を作らない設計が望ましい。なぜなら、積雪時の移動限界が勾配の有無によって極端に変わるからである。 即ち、水平な通路であれば 数cmの積雪まで車いすによる独力での移動が可能であると共に、介助も少ない負担ですむ。 しかし、スロープはたとえその勾配が規定の5%以下であっても利用限界の積雪深は小さい。また、スロープは降雪が無くとも、風が吹いただけで除雪効果が台無しになる。 除雪の頻度に限界がある現実を考えると、積雪地において利用施設F.L.を駐車場G.L.に近づけることの 重要性は他の地域に比べて格別に高い。
他方、我が国では伝統的に高床式の建物になじんできたし、建築デザインによっては床面を地盤高より高く設計する必然性のあるケースも考えられる。 また、地形条件により排水などへの配慮から、床面をG.L.より高くする必要のある場所もある。 そこで、駐車場G.L.より高い施設F.L.を採用する場合もあるが、その標高差は極力小さく抑える工夫が望まれる。 そして、F.L.を G.L.より高くする場合には、物理的障壁の排除または緩和と、利用の統合の両面からの検討が必要である。 前者についてはスロープの幅員や勾配、踊り場の設置や特殊変形縁石の使用など、既往の知見を適切に用いる必要がある。 後者は移動制約者が使えるだけの環境では不十分で、どんな構成のグループも全員が一緒に行動できる環境の創出が目標となる。 与件としての環境の違いにより検討事項は多様であるが、すべての利用者の動線を統合する工夫や、高さのすり付け等を施設全体の構成に融合させる設計などが必要となる。
(1.2) 人と車輌の動線管理
U.D.の観点から道の駅構内では人と車輌との分離を適切に行い、両者が交錯する危険箇所を明確化させる設計が望ましい。 しかし、多くの駅では人だけの活動区域、車輌の駐車区域と、人と車輌が共に移動に使う区域とに区画する一方、降車した人が利用施設に移動する動線を積極的に誘導する意図が感じられなかった。 そこで、駐車場から利用施設まで安全な動線が形成できるよう、設計に利用区分を落とし込むことが肝要と考える。 また、利用における過度な自由度を制限する上では、植え込みなどの物理的な区画物の導入が有効と考える。 そうすれば歩行者を通路部分に誘導できると共に、はみ出し駐車が防げるなど、人の歩行や車両の通行に必要な幅を常時維持できる。 植樹はだだっ広いだけで殺風景な駐車場を適度なアイストップで区切ることも可能にする。 また、運転に不慣れな人を含む誰もが駐車し易く、車を出し入れし易い駐車空間にする上では、駐車区画の寸法に余裕を持たせることや、 後退操作を要しない配置なども利用環境の改善に有効と思われる。
(1.3) 誰もが使える平面的、立体的環境(略)

(2)サービス水準維持の管理運営
(2.1) 衛生や積雪の日常的管理
トイレへのアクセス通路は冬季に積雪の影響が免れられないとの前提で施設を見るとき、今回の調査でその問題への対応策として二つの有効な方法がみられた。 まず、本節(1.1)で述べた駐車場G.L.とトイレF.L.との標高差を極小化する設計である。次に、センター施設とトイレとの利用動線の統合である。 後者については動線の共用部分が長ければセンター施設が営業する時間帯には人の目が届きやすく、積雪時でも相対的に良い除雪水準、また第三者等による支援が期待できる。 終日使用可能なトイレがセンター施設建屋の一部を構成する駅は43箇所(48%) あったが、センター施設とトイレとが利用動線を共有する区間が長く、 相対的に良い環境が維持されるものと思われる。
トイレの衛生管理は道の駅が総体として快適に利用できる環境の最低基準を定め、提供するサービス水準の維持が望まれる。 本課題は基本的に管理問題であるが、現地調査から施設設計の違いが利用者に与える印象も重要と感じた。 即ち、トイレの床の材質や壁面の色などが使用者の意識に働きかける作用が大きいように感じた。 床材ではモルタル仕上げ、陶タイルや化学樹脂系シートなど質感、目地間隔の大小などが視覚的印象に違いを与える。 また、床と壁の色や照度は利用者の清潔感に対する印象に影響を及ぼすように感じた。 この課題に関しては専門分野での知見があると思われるので印象のみにとどめるが、かかる視点からの取り組みが有効と思われる。
(2.2) 故障の発生時の対応策(略)

(3)快適に使える環境整備
(3.1) 安心して24時間利用できるトイレ
道の駅トイレが深夜を含め安全、安心に使える環境を維持することの困難性を認めた上で、環境改善の方策について現状から探ってみた。 今回調査した駅で三つのヒントがあった。第一は照明の方法、第二はオープンな施設構造、第三が他人の目の配置である。
第一の照明に関しては、数カ所の道の駅でサーチライトが設備され、その照射範囲内は他より明るく保たれると思われた。 駐車場全体を終夜明るく保つことは経費の問題や光害の恐れもあるが、トイレ前の一部駐車空間とトイレまでの通路部分を明るく保つことは安心な環境への改善に有効な手だてである。 ただし、単にトイレ周辺を明るくするだけでは不十分で、トイレ利用に係る動線周辺に死角を残さないことが肝要である。 第二の施設的な工夫ではトイレの内部が外から全く見えない施設がある一方、出入り口扉にガラス戸や天井から床までの明かり採りを使うなどして、 ロビー内部を駐車場から見られる構造とする駅があった。外から内部の共用空間が一定程度見えることは、不審者の不在確認に有効である。 ただし、駐車場から中が見えることは 不心得者にとっても同様であり、それが過度とならない適度な露出への配慮も同時に重要である。 第三に道の駅の構内、トイレ入口の近くにコンビニを配置する駅が2駅あった。終夜他人の 目の存在が感じられ、利用者にとって安心感が、 不心得者にとっては忌避感を高めるのに有効な方策と考える。
昨今の我が国の犯罪状況を考えると、どのような方策を講じたとしても、万全はあり得ないように思われる。 しかし、上述のような施設的な工夫やミクロの配置への配慮などの積み重ねにより、夜間における安全性の向上が期待できる。 また、それが困難な駅であれば、夜間の利用限界について告知することも必要かつ親切なサービスかもしれない。
(3.2) 誰もが立ち寄りたくなる誘因(略)
(3.3) 各自のペースで使える駐車場(略)
(3.4) いつでも使える休憩施設
道の駅が提供するサービスの中で、休憩機能は基幹的な機能の一つである。なぜなら、運転者の疲労回復を助けることは、安全な交通の確保に有効だからである。 休憩には固定的な姿勢でおさまるシートを離れ、新鮮な空気を吸いながら体を伸ばせる空間が必要である。 たいそうな施設は必要ない。外が雨、雪や風で荒れていても、極寒や酷暑の中、また闇夜であっても、安心して身体を伸ばし、飲み物をとるだけの空間さえあれば十分である。 しかし、無料休憩所はただ単に雨風がしのげ、暖冷房と照明だけでは必要条件を満たしても、十分条件を満たすとは言い難い。 他人の目の届きにくい時間帯のある道の駅では、誰もが使える一方で、誰が居るか分からず、トイレと同様に安全、安心への懸念があるからである。 そこで、すべての道の駅で必要十分な環境を整えることが不可能ならば、拠点施設を指定してサービスの集中化と高度化を図るなり、 休憩サービスはセンター施設の開館時間だけと割り切って告知するなりの判断が必要に思う。

(4)説明要らずの使用法
(4.1) 何処でも同じ基本サービス
道の駅が提供するサービスの間口は広く、北海道地区「道の駅連絡会」の「施設一覧」に23種類があり(表7参照)、駅毎に延930余項目に達する。 その意味では各駅のサービスのメニューを個別に紹介することが必要であるが、運転者が通過予定の路線沿いにある駅の情報をくまなく覚えることは困難である。 そこで、基幹的なサービスをすべての駅でいつでも誰もが使えるようにするならば、利用者が確認すべき情報量は半数以下に減る。著者が基本的サービスと分類した項目がこれに近い括りである。 無料休憩所以外の基本的サービスは既にすべての駅で整備済みか、あと数駅を残すのみである。駅毎に個別の事情があると思われるが、 それらの整備が個別の駅におけるサービスの向上にとどまらず、道内の道の駅総体の利用性を高める効果があり、早急な整備が望まれる。
(4.2) 誰もが使いやすい情報提供
道の駅の情報端末は多様な情報を汎用性の高いシステムで提供している。また、所管の機関が情報ページを持つ場合は、リンクを張るなどして詳細な最新情報が得られる柔軟なシステムである。 しかし、この柔軟なシステムは、コンピュータの操作に慣れた人々にとっては使い勝手がよい一方、そうでない人にとって高い敷居となる場合があるように感じる。
本件課題のUD的取り組みで設計仕様の限界を構成しそうな対象者グループとして、コンピュータの操作に慣れない人や外国人を考え、これらの人々が使い易い情報提供の方法について検討した。 まず、コンピュータに不慣れな人々が利用し易くする方策として、メニュー画面での「つかみ」と情報入手過程の単純化を目標と考えた。 前者に関してはドライブ中に人々が必要となる情報を厳選し、端末に触れてみようと思わせる表現と内容が重要になる。後者は情報表示までの階層を浅くすることが効果的と考えた。 そこで、情報に至る操作が単純な枠組みを設定し、その枠組みに合わせて提供する情報を絞り込む順序で組み立てることとし、
① 一画面での選択肢を6つ以下に限定する、
② 2アクションで情報に至る三層構造とする、
③ メニュー画面(第一層)の選択肢から得られる情報の内容が想像できる表現方法を追求する、
④ 必要最小限の情報だけに絞る、
ことを目標に据えた。
選択肢を1頁あたり最大6項目、3層構造の枠組みに合わせ、どのような情報が組み込めるかについて取捨した案を表9に示した。 また、第一層(メニュー画面案)の「つかみ」のイメージを図4に示した。ドライブの途次において必要姓が高いと思われる情報に絞り込むこと及び提供情報の想像できる表現を考えた。 第二層も選択画面であるが、極力少ない操作で情報に到達できる システムの構築が求められる。 「目的地までの時間距離」であれば、出発地を当該道の駅だけに限定し、目的地だけを地図上で選ばせたら1クリックに集約できる。 第三層は具体の情報提供画面であるが、当該道の駅から利用するのに妥当な範囲内の情報に限定することも一つの選択肢である。 例えば、緊急時のお助け機関であれば、その道の駅の所在地内の情報を一義として、 その市町村に該当のサービスが無い場合に走行する可能性のある方向別に近間の情報を紹介するなどがむしろ親切であろう。 日本語の理解能力への依存度を軽減する上では、次の諸点への配慮が必要である。
  ① 文字情報によらない選択肢の導入
  ② 絵記号による情報提供
  ③ 直感に一致する時系列の表現
  ④ 提供情報の厳選
  ⑤ 他機関にリンクを極力避ける
外部情報へのリンクが避けられない天気情報では選択肢の提示方法に工夫が必要で、例えば本道を20kmメッシュに区切って画面表示し、 利用者が地図上の場所を指定する2)などの方式が考えられる。また、予報の内容は短時間予測(24時間)だけに限定し、時系列に絵記号を並べれば、情報提供でも言葉の壁を低くできる2)。 情報を必要とする場所や目的地の指定を地図上で指し示す方法は言葉への依存度を軽くする効果も期待できる。 他の情報については提供範囲を最小限とすることにより、外部へのリンクを避けると共に翻訳等の労力を最小化でき、利用者に対する過度の選択肢の提示を避けられるものと考える。


現状分析編あとがき
この技術資料では主にU.D.の7原則をものさしとして、道の駅に求められる機能について展開した。 しかし、U.D.の附則にもあるように、施設設計にはこれら以外に考慮すべき事項がいくつもある。ここで述べた要求はそれらの一部であることに留意願いたい。
この資料で展開した内容を精読頂ければ、U.D.はどのような施設を整備するのかではなく、どのようなサービスを提供しようとするのかを追求する方法であることが明らかであろう。 更に、物理的に使えるだけでは不十分で、精神的にも使い易いサービスを目指すこともお判りいただけるであろう。 更に、人が施設に合わせて使うのではなく、施設を人に合わせる方向を追求し続ける努力も重要である。 U.D.は色々な切り口で表現されるが、この三点もU.D.の展開において重要な要件である。

注 記
1) 障害者の排泄管理の観点から各時間区分の持つ意味を整理すると次のようになる。
  30分以内 (紺実線) : 計画と実走行に安心な区間
  ~1時間 (青実線) : 旅程立案に余裕のある区間
  ~1時間半(緑実線) : 見落としに気をつける区間
  ~2時間 (黄実線) : 使用箇所を事前に決る区間
  2時間以上(赤細線) : 緊急避難法を想定する区間
2) 排尿を導尿に依存する人々は1回300cc以下、2~3 時間毎に行うよう3)に言われており、上述の区間は厳しい利用環境にある。

参考資料
1) 北の道ナビ「北海道の主要都市間の距離と時間検索」:北海道開発土木研究所、http://northern-road.jp/navi/index_time.htm
2) 天気予報:ヤン坊マー坊天気予報、http://www.yanbohmarboh.jp/tenki/mesh/hokkaido.html
3) 自己導尿法:Wheelchair-net、http://members.jcom.home.ne.jp/wheel-net/dounyo.htm

土木研究所 寒地土木研究所月報 2006年7月号掲載